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診療技術部門

難治性腹水に対する大量処理について

なぜ腹水は貯まるのか?

1.肝硬変などによる血液中のアルブミンの低下

肝硬変などにより、アルブミン※1をつくる機能が低下します。血液中のアルブミンが少なくなると、血管の外に漏れ出た水分を血管内に戻すことができなくなり、腹水がたまります。

※1 血液中のタンパク質の一つに「アルブミン」があります。アルブミンは、血管中に水分を保ったり、水分を血管の中に引き込む働きをしています。

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(図)アルブミンの低下により水分が血管の外に漏れ出る

2. 病気やがんなどによるもの

炎症性の病気やがん、肝硬変などにより、血管から血液成分や水分がしみだしやすくなり、腹水がたまります。

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(図)胃がんなどにより血管から白血球や赤血球がしみだしやすくなる

3. その他の原因

そのほかにも、門脈圧の上昇など、さまざまな原因で腹水がたまります。

難治性腹水に対する大量処理について

CART(カート)とは、Cell-free and concentrated Ascites Reinfusion Therapyの略です。正式には、胸水・腹水濾過濃縮再静注法といいます。

1977年に旭メディカルから現在のCARTシステムが発売。1981年に保険認可されたものの、がん性腹水治療法として一般に普及していないのが現状です。この原因としてCARTシステムの濾過方式上の欠点があげられます。腹水を最初に処理する濾過膜が血液透析システムと同様に内圧濾過方式(腹水をファイバーの内腔に押し込み、外腔に向かって濾過する方式)であることです。細胞成分の少ない肝性腹水では問題が少ないものの、がん細胞や白血球、フィブリンなどの細胞成分の多いがん性腹水では、狭いファイバー内腔に詰まるため、2kg前後で膜閉塞が生じて以後の腹水処理が不能となります。

また、腹水をローラーポンプで機械的に圧挫することに加えて、無理に濾過処理を続けようと濾過圧を上げると腹水に過度な圧ストレスがかかります。そのため白血球からインターロイキンなどの炎症物質が生じ、さらに濃縮膜にて濃縮されて点滴静注されるために高熱を引き起こす原因となります。

以上の重大な欠点により、1980年代後半にはCARTはがん性腹水には適応できないと認識され、一般に普及せず、現在に至っています。そこで、要町病院の松崎圭祐医師はこれらの欠点を解消した改良型CARTシステムを考案されました。このシステムは、Keisuke Matsusakiの頭文字からKM-CARTシステムと呼ばれています。

当院のCARTについて

当院のKM-CARTシステムによるCARTは、2013年6月より要町病院で直接教育・指導を受け実施しています。
近年ではCART専用装置開発、濾過膜や濃縮膜の開発も進み、腹水・胸水の状態にあったCARTを選択できるようになってきました。当院も一定の基準を設け、濾過器・濃縮器(旭化成メディカル社製AHF-MO、AHF-UFやカネカメディックス社製マスキュアなど)やCART方法も選択することで患者さんの負担軽減につながります。
現在では、KM-CARTシステム及びM-CARTを実施しています。

KM-CART
 
M-CART

これまでの平均腹水採取量は、8.77㎏(1.89~24.76㎏;低温保存腹水含む)です。
CART方法を選択することで、より良質のタンパク質(アルブミン、グロブリン)を回収し、再静注することが可能となります。
また、腹水性状にあったCARTシステムを選択することで安全で効果的なCARTを実現し、自覚症状と全身状態の早期改善が期待できます。

腹水を抜くと・・・

腹水による腹部膨満感が出現し始めたら、早期から積極的に腹水の全量をドレナージし、KM-CARTシステムによる症状緩和を図らなければなりません。症状緩和により、全身状態の改善と闘病意欲の回復ができれば、化学療法など抗がん治療の開始や再開につながり、さらに長期の症状緩和が得られる可能性があります。

CARTの流れについて

1.CARTをご希望の方は必ず、あらかじめME科へご連絡下さい。

(8時30分から16時30分まで)

セントマーガレット病院(代表)
TEL:047-485-5111(代)
FAX:047-484-1119

 

2.当院でCARTを行う場合は、治療を受けられている医療機関の紹介状が必要になります。
現在の症状を把握する為、可能な限り血液検査データや画像情報(X線画像やCT画像など)をご持参の上、
外科外来を受診して下さい。(担当医師:月曜日 朝戸院長、 木曜日 美濃島医師)

CARTの費用について

CARTは入院治療として保険診療で受けられます。
{胸水・腹水濾過濃縮再静注法+材料費+諸検査+処置+入院料(2泊3日)}×保険負担率+諸経費(食事など)
3割負担の方は約67,000円、1割負担の方は約27,000円です。

治療風景と実績

【症例1】 64歳、男性、病歴は慢性腎不全にて透析中、C型肝炎、肝硬変による難治性腹水であり、症状としては難治性腹水による腹部膨満感、食欲不振、歩行困難などである。治療としては、利尿剤を使用したいところであったが、腎不全による無尿のためCARTを実施しました。結果は初回のCARTで12.9kg抜水したことで腹部膨満感は解消し、食欲も増進、独歩にて退院となりました。
 本患者は合計42回CARTを実施しました。腹腔穿刺による出血や感染、腹水を大量に抜くことによる血圧低下や不定愁訴を懸念しましたが、出血や症状も無く、濾過濃縮後の再静注においても発熱等の症状はありませんでした。

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【症例2】 55歳、男性、病歴は肝硬変、肝癌による難治性腹水であり、症状は腹部膨満感、歩行困難などである。治療は入院治療にて利尿剤治療を行っていたが症状が改善せず、CART治療を実施しました。初回治療で12.33kg抜水し、腹部膨満感は解消し、独歩可能となりました。
 本患者は2泊3日のCART入院治療を合計7回実施しました。腹腔穿刺部から少量の出血はありましたが、輸血などの治療を必要とすることもありませんでした。なお、腹水抜水時の不定愁訴、濾過濃縮後の再静注における発熱等の症状はありませんでした。

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【症例3】 61歳、女性、肝硬変による難治性腹水であり、症状は腹部膨満感、食欲不振、歩行困難(現在は車椅子移動)などである。約半年前より腹水貯留が始まり、かかりつけ病院にて腹水抜去のみを約10回程度実施していたが、抜水間隔も短くなり、かかりつけ病院でCART治療を相談したが、乳び腹水のため難色を示されていたところ、本院ホームページでKM-CARTシステムの存在を知り、相談がありました。対処可能と判断し入院CARTとなりました。
 合計17.8kgの乳び腹水を抜水し、CARTにて0.86kgまで濾過濃縮し、再静注後、翌日退院となりました。大量腹水貯留に抜水後に、胸部痛(大量抜水による筋肉痛のようなもの)は軽度発症しましたが、発熱等合併症はありませんでした。

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2013年6月から2023年12月末までの実績
CART処理件数 462例
内訳
腹水症例 425例(肝炎・肝硬変、癌性etc…)
胸水症例 37例(肝炎・肝硬変、癌性、心不全etc…)
CART種類分類
KM-CARTシステム症例 412例(あらゆる症例)
M-CART症例 50例(粘性の高い大量腹水など)
低温保存CART 55症例(2週間を待てずに貯留した腹水を保存)





CART治療のリスクと副作用について

 CART治療を実施する際、腹腔または胸腔にカテーテルを挿入するために局所麻酔を行ったうえで穿刺をします。稀ではありますが、穿刺に伴う痛みや出血が起こることがあります。
 また、濾過濃縮した腹水、胸水を還元(再静注)した後、嘔気や発熱が起こることがあります。
 これらにつきましては、診察時に担当医より詳しく説明させていただき、同意のうえ検査、治療をさせていただきます。

 

お問い合わせ

申込方法やご不明な点は、当院 ME科へお気軽にご連絡ください。

(8時30分から16時30分まで)

セントマーガレット病院(代表)
TEL:047-485-5111(代)
FAX:047-484-1119